下肢静脈瘤の治療メニュー
より痛みや合併症の少ない新しい治療法
以前、下肢静脈瘤の手術は、神経障害などの合併症のリスクが高いため、積極的には行われていませんでした。
神経障害とは、一生しびれが残ったり、痛みが続いたり、足が上がらなくなってしまうもので、できる限り避けたい障害です。
ところが、新しく血管内焼灼術という治療法が登場し、2011年に保険適用になったことで、これまでより安全性が増し、しかも、これまでに比べると痛みも少ない手術で下肢静脈瘤を治すことができるようになりました。
当院は下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施管理委員会 認定施設です。
下肢静脈瘤の病因
足の静脈は、老廃物を含んだ血液を心臓の方へと戻すため、重力に逆らって「下から上へ」と流れています。静脈の血管には、血液の逆流を防ぐ「静脈弁」が一定間隔でついています。この静脈弁が壊れる病気を下肢静脈瘤と言います。「静脈弁」が壊れてしまうと、老廃物が心臓に戻りきれず、足の静脈の中に溜まってしまいます。
これを放っておくと、静脈弁の故障を連鎖的に引き起こして、どんどん静脈の中に老廃物が溜まり続けていきます。
老廃物が溜まると、足が疲れやすくなったり、疲れがとれなかったり、じっと座っていても足がつるようになります。
下肢静脈瘤は進行すると、皮膚炎や皮膚が取れて潰瘍になったり、感染症を起こす恐れもあります。また、静脈瘤の合併症の中に静脈内血栓がありますが、この血栓が肺に移動すると肺血栓塞栓症(肺梗塞)になり、突然の呼吸困難に陥ります。
【日帰り治療法 1 】ストリッピング手術
下肢静脈瘤は進行性の病気で、一度発症してしまうと自然に治ることはありません。
下肢静脈瘤を治すためには、血液の逆流を止めて足の静脈に老廃物がたまらないようにする必要があります。しかし弁が壊れていると、これは薬やリハビリではもう治りません。血管自体を抜去する、つまり、弁が壊れた血管をなくしてしまう必要があります。
ストリッピング手術は、この弁が壊れて逆流している範囲の血管自体を取り除く治療法です。
数年前までは、このストリッピング手術が主におこなわれていましたが、現在は、症状が重症化していて、保険適用の高周波やレーザーの血管内焼灼術では対応できない場合や、また血管が蛇行していて血管内焼灼術がおこなえない場合などに、このストリッピング手術をおこないます。
以前、ストリッピング手術は、1週間程度の入院が必要でしたが、現在は、このストリッピング手術も日帰りでおこなうことが出来るようになりました。
ストリッピング手術の合併症としては、神経障害を引きをおこす可能性があります。血管の周囲には神経が通っているため、10人に1人以上の割合で血管を引き抜く時に神経を傷つけることによって神経障害がおこります。重症化してしまうと、保険診療では他に治療法がなくなってしまうため、早期発見、早期予防に気を付けることが大切です。
【日帰り治療法 2 】30分で終わる血管内焼灼術
近年、ラジオ波/高周波、レーザーなどの最新治療により血管内に直接熱を加えて、足の血管を閉塞させ逆流を止める「血管内焼灼術」が行われるようになりました。
血管を取らなくてもよくなったので、神経障害の発生を大幅に減らせるようになりました。
2011年、最初に日本で保険適用になったのはダイオードレーザーです。
このダイオードレーザーは、先端の温度が千度程度までに達し血管外に伝わる熱は600~700度にもなってしまいます。それによって周辺組織が火傷を起こすので個人差はあるものの手術後2~3週間は痛みが続く場合もあります。痛みに弱い方の場合は1週間は歩けないくらいの痛みが生じる場合もあり、また神経障害のリスクが2.5パーセント程度はあります。
2015年には、高周波が保険適用になりました。レーザーは温度のコントロールが難しいのに比べ、高周波は120度までにおさえるセンサーをつけて血管を焼灼して閉塞させることができます。ただし焼灼温度が低いので一度で完全に閉塞しないケースが1割くらいの確率で起き数回の手術が必要となる場合もあります。神経障害リスクは、ダイオードレーザーより低く1パーセント程度まで減ります。痛みに弱い方の場合は、少々の痛みがある場合もありますが、鎮痛剤を服用することで緩和されます。
【日帰り治療法 3 】高位結紮術
下肢静脈瘤の血管内治療の適応にならないケースは、最初から血管が蛇行していてファイバーがうまく血管内を通らないケースです。超音波エコー検査で診断できます。
この場合は高位結紮(こういけっさつ)術といって、血管をしばって、血液の逆流を食い止める手術を行います。日帰りでできる、身体の負担の少ない手術ですが、4~5年での再発の確率が高いことが問題となってもいます。
【日帰り治療法 4 】弾性ストッキングによる圧迫療法(保存療法)
血液の逆流がないにもかかわらず、むくみがある人の場合は、リンパに故障があって廃液の流れが悪くなっていることが多く様々な症状が出ます。この場合は保存的治療法として医療用弾性ストッキングや弾性包帯による液体が圧の強いところから弱いところに流れる性質を利用した圧迫療法を行います。
医療用の弾性繊維で出来た弾性包帯や弾性ストッキングなどの医療器具で足を外部から段階的に圧迫することで、足首の部分を一番強く圧迫して血液やリンパ液の流れを促進し、症状を軽減させます。
血管内治療の手術を行った方も、老廃物をなるべく早く排出するために、最低1カ月間(通常3ケ月程度)はこの弾性ストッキングを履いていただきます。
【日帰り治療法 5 】注射による硬化療法
手術をするほど太くない静脈瘤や、クモの巣状静脈瘤などで皮膚の色が悪くなっている場合は、血管を硬化させて血流を止める硬化剤の注射を行います。そうするとその部分の血液の流れがなくなり静脈瘤が解消します。これが注射による硬化療法です。
ただし、症状が進行した静脈瘤や伏在型などの静脈瘤では治療に限界があるため適用とならない場合もあります。
治療費
初診料 | 3割負担の場合 : ¥860 |
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再診料 | 3割負担の場合 : ¥380 |
健康保険証 | 来院時に必ず健康保険証をお持ちください |
下肢静脈瘤 保険診療(3割負担)
血管内焼灼術 (血管1本あたり) | 約¥33,500 |
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硬化療法 (1アンプル) | ¥5,900~ |
高位結紮術 (血管1本あたり) | ¥30,000~ |
静脈抜去術 (血管1本あたり) | ¥50,000~ |
※保険診療の料金は、国民健康保険法や健康保険法により定められた診療報酬に基づき算出いたします。
※診療報酬の改定により料金が変更になる場合がございます。(料金表は2024年4月1日現在)