毎年5月25日~31日は「脳卒中週間」ということをご存じでしょうか。
平成14年から日本脳卒中協会が毎年5月25日~31日は「脳卒中週間」と定め、脳卒中に関する啓蒙を積極的に行う期間となっています。
冬に発症することが多いという印象の脳卒中ですが、実は脳卒中の大部分を占める脳梗塞の発症は6月~8月に増加することが厚労省の研究でわかりました。(厚生省健康科学総合研究事業 脳梗塞急性期医療の実態に関する研究より)そのため、脳梗塞の発症が増加する6月目前の5月末の一週間を、毎年「脳卒中週間」として国民に予防を促しています。
ではなぜ、多くの人が「脳卒中は冬に多い」という印象を持っているのでしょう。
それは、脳の血管が破れることによって起こる「脳出血」や「くも膜下出血」は、冬に発症ることが多いためです。
脳卒中には2つのタイプがあります。
脳の血管が「詰まる」タイプと「破れる」タイプです。
血管が「破れる」タイプの脳出血やくも膜下出血は冬場に多く発症します。
脳の血管が破れることによって起こる「脳出血」や「くも膜下出血」の最大のリスクは高血圧です。寒い冬になると血管が収縮し、血圧が上がることで血管が破れやすくなります。両手首から先を4℃の水の中につけると、血圧は10-20mmHgほど上昇します。これは、手の温度が下がることで血管が収縮し血圧が上がることが原因です。室内であっても、暖房の効いた部屋から、急に暖房が入っていない洗面所(脱衣所)やトイレなどに入ると急激な温度差により血管が収縮し血圧が上昇します。
また、冬は高血圧のリスクとなる塩分の多い鍋物などの食事が増えたり、汗をかくことも少なく、運動不足にもなりがちで体重が増えることも血圧の上昇に拍車をかけます。このような理由から、脳出血やくも膜下出血は冬に多く発症し、夏は発症数が半減します。
一方、血管が詰まるタイプの「脳梗塞」は、冬場だけでなく夏場にも発症が増加します。実は、脳梗塞は、夏場(6~8月)に最も多く発症しているのです。
この脳梗塞には大きく分けて3つタイプがあります。
・ラクナ梗塞⇒脳の細い血管が詰まる脳梗塞
・アテローム血栓性脳梗塞⇒脳の太い血管に血栓できて詰まる脳梗塞
・心原性脳塞栓症⇒心臓の血管内にできた血栓が脳に飛んで詰まる脳梗塞
中でも「ラクナ梗塞」と「アテローム血栓性脳梗塞」は夏に多く発症します。
この2つの発症が多くなる原因は「脱水」です。夏になって暑くなると汗を多くかくため、血液中の水分量が不足し脱水になります。その結果、血液がどろどろの状態になります。また、夏は身体の熱を放出しようとして血管が拡張するため、血液の流れが遅くなります。このどろどろの血液がゆっくり流れているうちに血液内の成分が固まりやすくなり、その結果血栓ができて血管の詰まり、脳梗塞を発症します。特に身体の調節機能が低下している高齢者などは、脳梗塞を発症しやすいと言われています。
室内にいるから大丈夫と思っている人も多いとは思いますが、汗をかいていなくても皮膚や呼吸からも水分を失っています。これは意識していなくても起こることなので、気づかないうちに体内は脱水状態になっていることもあります。のどが渇いていなくても、こまめに水分補給することが重要です。
脳卒中はリスク管理をすることで発症を予防できます。
夏は脱水にならないよう水分補給をこまめに行いましょう。また、脳卒中の発症リスクとなる、高血圧、高脂血症、糖尿病を発症しないよう、もしくは悪化しないよう生活習慣を見直し、喫煙している人は禁煙することも大切です。一度発症をしてしまうと、生活に支障がでるほどの後遺症が残ってしまうことも多い病気です。まずは発症しないためにできることを行い、万が一発症した場合は、すぐに救急車を呼んで病院に行きましょう。