厚生労働省は2日、新型コロナウイルスへの治療効果が期待されている「レムデシビル」について、アメリカで緊急的な使用が許可されたことを受け、「特例承認」と呼ばれる制度を適用し、早期の薬事承認する手続きに入りました。早ければ1週間程度での承認を目指しており、承認されれば国内で初めての新型コロナウイルスの治療薬となります。
「レムデシビル」はアメリカでエボラ出血熱の治療薬として開発してきた医薬品で、新型コロナウイルスにも効果が期待できるとし、日本でも臨床試験が進められています。
加藤厚生労働大臣は海外での動向を見ながら、日本国内でも審査を大幅に簡略化できる「特例承認」と呼ばれる制度を適用し、早期の承認を目指す考えを明らかにしていました。
こうした中、アメリカ政府が5月1日、緊急的な使用を認めたことから、厚生労働省はレムデシビルの「特例承認」に向けた手続きを開始しました。
政府は5月2日午後、国内でも審査の手続きを簡潔にできる「特例承認」制度を適用するため、閣議を持ち回りで行い、政令を改正しました。厚生労働省は製薬会社からの申請を受け次第、審議会を開き、アメリカ政府に提出された治験のデータについて専門家の意見を求めることにしています。早ければ1週間程度での承認を目指しており、承認されれば国内で初めての新型コロナウイルスの治療薬となります。
ただし、レムデシビルは流通量に限りがあるため、当面は厚生労働省の管理の下で特定の病院にのみ供給される可能性があります。
「特例承認」とは
他国で販売・使用されている日本国内未承認の新薬を、緊急性が高い場合に通常よりも手続きを大幅に簡略化し、早期に承認できる法律上の仕組みのことです。
健康に重大な影響を与える可能性がある病気がまん延し、他に治療薬がない場合に、緊急に使う必要がある医薬品が対象で、日本と同じ水準の承認制度がある海外の国ですでに販売・使用されていることなどが条件となっています。
過去、新型インフルエンザのワクチン2品目について、「特例承認」が行われたことがあります。
レムデシビルに「特例承認」を適用するためには、新型コロナウイルスの治療薬を対象とすることなどの政令の改正が必要となります。厚生労働省は通常は1年程度かかる承認手続きを大幅に短縮し、早ければおおむね1週間程度での承認を目指しています。
レムデシビルとは
レムデシビルはエボラ出血熱の治療薬として、アメリカに本社がある「ギリアド・サイエンシズ」が開発を進めてきました。
試験管内の実験で、新型コロナウイルスの動きを抑える効果があったため、治療効果が期待されるようになりました。
このため、日本を含む各国が参加する国際的な臨床試験が行われており、製薬会社によりますとおよそ90人に国内でも投与されることになっています。
このうち、アメリカの臨床試験では、結果の一部の分析ではありますが、投与された患者がそうではない患者に比べ、回復にかかる期間が4日短縮されたことなどが確認されたということです。
こうした試験結果を受け、アメリカでは、緊急的な場合に限り、レムデシビルの使用が許可されることになりました。
ただ、アメリカの当局は、緊急で使用を認める手続きについては正式な審査を受けた承認とは異なるため、有効性や安全性については、まだ、限定的な情報しか得られていないとしています。
レムデシビルは、副作用として腎機能の低下などの指摘がされているほか、イギリスの医学雑誌には、中国での臨床試験の結果「統計上、有意な効果はみられなかった」とする論文が掲載されており、海外では評価がわかれています。
専門家「重症患者向け治療薬として期待できるか」
感染症の治療に詳しい愛知医科大学の森島恒雄客員教授は、厚生労働省が、レムデシビルの早期の承認に向けた手続きを始めたことについて、「新型コロナウイルスについてはまだ特効薬がないため、既存の薬の中からよく効く薬を探しているのが現状だ。レムデシビルは、飲み薬ではなく、静脈注射で10日間ほどの期間投与するもので、海外では、これまでに、肺炎を起こして人工呼吸器が必要になるなど、重症の患者に使用することで、ウイルスの増殖を抑える効果が確認されている。国内で承認されれば、主に重症の患者向けの治療薬として期待できるのではないか」と話しています。
その一方で、「かなりの確率で腎臓に機能障害などの副作用が出ることがわかっているので、重症の患者を数多く治療している医療機関や薬の扱いに慣れた専門施設などで使われることが望ましい」としています。
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